あの恐らしい酒鬼薔薇聖斗事件からもう数十年が経過する。当時まだ14歳の少年が起こした恐ろしい事件について、記憶に深く刻み込まれている読者も多いのではないだろうか?
こうした事件が起こると、その犯行をした犯人と被害者に注目されがちであるが、忘れてはならないのが加害者家族についてである。
何も悪い事をしていなかったにも関わらず、ある日突然マスコミに終われ、世間の批判の的にされ、人生を狂わされてしまう人たち。
今回はそんな酒鬼薔薇聖斗事件で被害者同様人生を狂わされてしまい、今も贖罪の日々を送っている加害者家族の現在の様子について迫りたいと思う。
酒鬼薔薇聖斗の母親、家族はどうしている?事件による苦悩と彼らの23年の歩みとは。
1997年に起きた「神戸連続児童殺傷事件」。事件の概要や主犯である酒鬼薔薇聖斗の現在についてコチラの記事でまとめているので、気になる方は見てほしい。
さて、主犯である彼の様子以外にも当然気になるのは、加害者側の家族である。被害者家族同様、苦悩の日々を送っているはずだ。
ここでは、酒鬼薔薇聖斗、元少年Aの母親、父親、二人の弟のその後について、両親による手記の出版、現在までの歩みについてまとめていきたい。
事件直後、酒鬼薔薇聖斗の家族はどうなった?マスコミ、世間からの逃亡生活とは。
元少年Aが逮捕された1997年6月28日。朝から警察が来た。両親は、何のことだかわからなかったと言う。
父親の日記が、その逮捕の日から始まっていた。下記は父親の日記の始まりであり、両親が出した手記「少年A この子を生んで」(1999年文藝春秋より出版)からの抜粋でもある。
〈1997年6月28日(土曜日)――逮捕の日
朝7時15分ごろ、今日は子供達の学校も私の会社も休みで、家族全員その時はまだ眠っていました。
突然、インターホンが鳴り、私が寝間から起きて玄関のドアを開けると、警察の方が二人中に入ってきて、スッと警察手帳を見せられました。名前までは覚えていません。
「外では人目に付くので」と言った後、一人が玄関のドアを開め、「息子さんに話を聞きたいのですが……」と言われました。
「はあ、ウチ、息子は三人おりますが……」「ご長男A君です」〉
元少年Aは連行され、次いで母親が警察に行った。警察が来たのは朝だったが、母親が帰ったのは午後6時ごろだったと言う。
まだ何のことか分からないまま、弟二人を近くの親戚に預けた。その後、「淳君の件で家宅捜索をさせてもらいます。」と警察に告げられたのだ。
その時の様子も、両親の手記に記されている。
〈まさか淳君の事件にAが関わっているとは、正直言って想像もできませんでした。「A君を容疑者として今、取り調べをしています」(中略)
あまりのことに、記憶も途切れ途切れにしか残っていません。妻も同じで、「お父さん、これ、どうなってるの。もう一回言うて」と混乱するばかり。
「Aが何したんですか? えー、何したんですか?」私も繰り返し繰り返し、尋ねていたように思います。
妻は、次の月曜に当たっていた町の掃除当番ができなくなることを思い出し、隣の家に伝えに出ましたが、もうフラフラ状態で顔は土気色でした。〉
両親の信じられない思いを他所に、家宅捜索は進んで行く。捜索が終らぬうちに、本人が自白、未成年のため名前が出ることはなかったがニュースでも報道された。
信じられない気持ちで、面会を求めるがマスコミが警察にも押しかけていた。ようやく面会できたのは、少年鑑別所に送られてからだったと言う。
初めての面会で父親は次のように声をかけた。
「誰が何と言おうと、Aはお父さんとお母さんの子供やから、家族五人で頑張って行こうな」
しかし、元少年Aには届かない。帰ってきた言葉は、
「帰れ、ブタ野郎!」
ものすごい形相で両親を睨みつけ、怒鳴り散らしたと言う。
加えて、マスコミと世間の目。何の罪もない弟二人を守らなければならない。家族はバラバラになった。
父親は、離婚し、苗字を変え、親戚のもとで可能な限りひっそりと暮らすようになった。それもこれも元少年Aの弟二人のため。
弟二人は、名前を変え、少年Aの家族であることは隠して生活している。上の弟は、最初は工学部に進学していたが、数年前、アニメの学校に通っていたというところまで分かっている。
こういう専門学校、長くても2年として、卒業したてといったところだろうか。下の弟は、高校を中退して働いている。
手記 「少年A」この子を生んでの出版へ 酒鬼薔薇聖斗事件の賠償金は一体いくら?印税で払えているのか?
事件から2年後、元少年Aの両親は、手記を出版している。
「少年A この子を生んで」という本だ。
この手記の出版に大きく関わった二人の人物がいた。
森下香枝記者(現在は週刊朝日編集長)と少年Aの弁護士の羽柴修弁護士の二人であった。
この二人がいなかったら、この手記は出版されることはなかっただろう。自分が産んだ子どもが猟奇的な殺人犯人だった母親とその家族の悲痛、被害者遺族への気持ちが綴られている。
当時は週刊文春の記者だった森下記者は、かなりの凄腕だっただけではない。的確で正直、誠実。
森下記者は、日本だけでなく海外での少年犯罪を調べ上げ、事例を羽柴弁護士に報告していた。海外では、自分の家族が起こした事件について執筆をし、出版し、印税を賠償金に当てている事例があったのだ。
羽柴弁護士の信頼を得て、元少年Aの両親に会い、手記の出版までこぎつけたのだった。
元少年Aの両親を動かしたのは、凄腕記者と彼らを支える弁護士でもあるのだが、印税の存在も無視はできない。
何しろ、あの事件以来、父親は仕事を辞め退職金のすべてを賠償金に当てたが、とうてい足りない。両親がコンビニで働き、弟二人を養っていた。
土師淳君の遺族は、少年Aの両親に対して賠償金を求めていた。「家庭裁判の内容開示」が目的であったが、請求額は1億4000万円。
山下彩香さんの遺族には、8000万円の示談が成立していた。他にも怪我をさせた児童への支払いもある。
羽柴弁護士から被害者遺族に、この額の賠償金は印税でしか払えないことが伝えられ、きちんと内容も了承を得て出版の運びとなったのである。
その仕組みはこうである。
まず、羽柴弁護士が印税用の口座を開設。そして、被害者遺族がいつでもチェックできるようにしたのだ。
つまり、被害者遺族は、元少年Aの両親が印税で得たお金を自分の私服を肥やすために使うことはない、贅沢をするためでもないと言うことを目にすることができるのである。
被害者遺族は、現在も印税を賠償金として受け取っている。
「少年A」この子を生んで 両親の悲痛な思いがここに。酒鬼薔薇聖斗を犯罪者にしたのは、本当に母親の躾が原因だったのか?
「少年A この子を生んで」の中に、母親の悲痛な思いが書かれている。
〈あの子の行為で淳君、彩花さんはどんなに苦しみ、辛く痛い思いをなさったのでしょうか? ご本人たち、ご家族がAの行為により、どんなに悲しみ、苦しまれたのか?
Aは自分の正当性ばかりを主張し、やってしまった行為の責任を負うことなど、とうていできるはずもない、ということになぜ気付かないのでしょうか?
息子には、生きる資格などとうていありません。
もし、逆に私の子供たちがあのような行為で傷つけられ、命を奪われたら、私はその犯人を殺してやりたい。償われるより、死んでくれた方がマシ、と思うはずです。
ささやかで不甲斐ないお詫びをされるよりかは、いっそAや私たちが死んだ方が、せいせいされることでしょう。きっと被害者のご家族は、私たちが存在していること自体、嫌悪されているのではないでしょうか。
いつの日かAを連れて、お詫びに行くなどとんでもなく、虫のいい話かもしれません。
被害者のお宅にAが姿を見せたとすると、ご家族の方々に「死んで償え」と罵倒され、たとえその場で殺されたとしても、当然の報いで仕方がないことだと思います。
でも、その時は私に死なせてください。(中略)
私は夫のためには死ねませんが、息子のためであれば、死ねます。Aのやったことはあの子を生み、育てた私の責任です。〉(同書)
本当に償いたい、元少年Aへの想いが感じられる。
当時、母親の躾が厳しすぎて少年Aが犯罪者になったと言う報道が多くあった。
しかし、ここで思うのは、「それはどんな厳しい躾なのか?どのような躾で子どもは殺人者になってしまうのか?」という事。
そんな大それた躾自体存在するのか?
森下記者は、事件の担当であった。当然これらの報道を見ていた。そして、語った。実際に会った少年Aの両親は、いたって普通の両親だったと言う。
人は、何か口にするときに相手の事を考えて言葉を選ぶ。報道であれば、より慎重に言葉を選ぶべきだと思うが…。どういう事だ?と問いたいが今更である。
元少年Aの両親は、本当に加害者遺族に誠意を持って接していた。羽柴弁護士の立会いのもと、被害者遺族との面会も行っているくらいだ。
この痛ましい事件の一番の被害者は、もちろん殺害された、重傷を負わされた子ども達であり、その家族であるが、元少年Aの家族も苦しんでいる被害者と言ってもいいだろう。
まとめ
人々を恐怖に陥れた「酒鬼薔薇聖斗事件」。今回は酒鬼薔薇聖斗こと元少年Aとその家族について調査を行った。
ここでまとめに入りたいと思う。
- 元少年Aの家族は、バラバラになり名前を変えひっそりと暮らしている。
- 元少年Aの両親は、手記「少年A この子を生んで」を出版。被害者遺族の了承を得た後の出版で、印税は賠償金として被害者遺族に支払われている。
- 元少年Aの母親は躾が厳しすぎて、そのせいで元少年Aは殺人者になったという報道が多くみられたが、両親はいたって普通の親であった。今でも被害者遺族に誠意を持って接している。
事件の恐ろしいところは、誰もが幸福になれないということにある。至って普通の好青年だった彼があのような恐ろしい事件を起こすとは一体誰が想像できたのか?。
被害者の心情を考えるとあまり大きな声で言えないが、どうか加害者家族の安らかな平穏についても切に願いつつ、この記事を終えたいと思う。
さて、加害者家族の現状については分かったが、肝心の酒鬼薔薇聖斗は今どこで何をしているのだろうか?
噂によると、改名して本の印税で稼ぎつつ結婚して子供がいるようである。あれだけの事件を起こした犯人が幸せに生活しているとはどこか納得いかないが…
気になる方はこちらの記事を見て欲しい。
少年Aの母親にも異常な行動があったようなので、気になる方はこちらの記事を見てほしい。
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